はじめに

2026年3月、カナダの公共放送CBCが、ある日本人留学生の痛ましい事件を報じました。英語を学ぶために22歳でトロントに渡った日本人男性が、ノバスコシア州の田舎にあるキャンプ場で約1年間長時間労働をさせられ、受け取った報酬は合計でわずか300ドルだったというのです。

留学斡旋に携わる者として、そして同じ日本人として、この記事を読んで強い憤りと悲しみを覚えました。今日はこの事件を題材に、これからカナダ留学を考えている皆さんに、ぜひ知っておいていただきたい「労働搾取(labour trafficking)」についてお伝えします。

何が起きたのか

被害に遭ったのは、純粋に英語を学ぶためにトロントへ渡った日本人男性でした。語学プログラムを修了した直後、知り合ったオンタリオ州在住の65歳男性から、「もっと稼げる」「家族をカナダに呼び寄せる手助けをする」「お金も家も電話も衣服も用意する」といった甘い言葉をかけられ、一緒にノバスコシア州ディグビー郡の田舎へ移り住むことになります。

そこでの生活は過酷の一言でした。造園、皿洗い、トイレ掃除、食料品の買い出し、フードトラックの運営、業者対応など、あらゆる雑務をこなし、時には朝6時から夜10時まで働かされたといいます。それでも「衣食住は与えている」という理屈で、約1年間で支払われた金額はたったの300ドル。

本人は後に「誰を信じていいのか分からず、ときどき泣いていた」とインタビューで語っています。最終的に、異変に気づいた地元住民がオンライン募金を立ち上げ、YMCAの移民労働者支援プロジェクトが介入。RCMP(連邦警察)の捜査の結果、加害者の65歳男性は人身取引・金銭的利益の受領・虚偽の申し立て・恐喝の容疑で起訴されました。

そもそも「労働搾取」とは

RCMPによれば、労働搾取(labour trafficking)は、単なる賃金未払いや劣悪な労働環境(これらは州の労働基準違反)とは別の次元にある「犯罪」です。次のような要素が絡むと、刑事事件になります。

カナダの人身取引ホットラインへの労働搾取に関する通報件数は、2020〜2022年は年平均24件だったのが、2023年に57件、2024年には100件と急増しています。しかも、専門家は実態はこれよりはるかに多いとみています。

なぜ留学生が狙われやすいのか

ノバスコシア州RCMPのMacFarlane巡査部長は、新規移民や一時滞在ビザの外国人がとくに被害に遭いやすいと指摘します。理由は明確です。

  1. カナダの労働法や自分の権利を知らない
  2. 言語の壁で相談先がわからない
  3. ビザを失うことへの恐怖
  4. 住居まで雇用主に握られていて逃げ場がない
  5. 家族・友人が近くにいない孤独

「英語を学びたい」「カナダで挑戦したい」という前向きな夢こそが、悪意ある人物に利用されてしまうのです。

危険信号(レッドフラッグ)チェックリスト

もし次のような勧誘を受けたら、必ず立ち止まってください。

個人が「永住権を取らせてあげる」「家族をカナダに呼べるようにしてあげる」と約束する → 個人にそのような権限はありません。判断するのは連邦政府だけです。

「衣食住を提供するから給料はいらないでしょ」と言われる → カナダには最低賃金法があり、すべての労働者に適用されます。

パスポートや書類を「預かるよ」と言われる → 絶対に渡してはいけません。典型的な人身取引の手口です。

都市部から人里離れた場所へ「一緒に行こう」と誘われる → 孤立させることが搾取の第一歩です。

雇用主が住居も移動手段も握っている → 逃げられない状況を意図的に作っています。

正式な雇用契約書(Employment Contract)がない、または曖昧 → 正当な雇用には必ず書面があります。

Canada Study Plusとして、お伝えしたいこと

私たちは20年以上、日本人の方々のカナダ留学をサポートしてきました。その中で、残念ながら「こんなはずじゃなかった」という経験をされた方も少なからずいらっしゃいました。

だからこそ、私たちは以下のことを強く訴えたいと思います。

信頼できる窓口を必ず持ってください

カナダに渡航する前に、緊急時の相談先を確認しておきましょう。

書面のない約束は約束ではありません

「ビザの手伝いをする」「永住権を取らせてあげる」「家族を呼べるようにする」。こうした口約束は、カナダの移民法において何の効力も持ちません。

正規の就労には必ず**雇用契約書(Employment Contract)**があります。署名する前に、給与・労働時間・休暇・解雇条件を必ず確認してください。

孤立しないでください

問題が起きたとき、最も危険なのは「誰にも相談できない」状況です。渡航前から、信頼できる友人や家族、そして私たちのような留学エージェントとのつながりを保ってください。

何か少しでも「おかしいな」と感じたら、すぐにご連絡ください。一人で抱え込む必要はありません。

まとめ

カナダは安全で開かれた国です。しかし、どんな国にも悪意を持った人間は存在します。

「まさか自分が」という感覚が、最大の落とし穴です。特に語学力に自信がないうちは、親切に見える言葉の裏に隠された意図を見抜くことが難しい。だからこそ、渡航前の準備と正しい知識が大切なのです。

夢を持ってカナダへ渡る皆さんが、安全に、そして充実した留学生活を送れるよう、私たちCanada Study Plusは引き続きサポートしてまいります。

もし困ったことがあれば、いつでもご連絡ください。